研究概要
株式会社Artisan Labは、微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)が細胞内に蓄積する特有の多糖類 「パラミロン」に着目し、その構造を化学修飾することで、糖尿病や肥満の改善に強力な効果を発揮する革新的な次世代物質(パラミロン誘導体)を創出・発表しています。
開発の背景と「パラミロンの特異な性質」
自然界においてパラミロンは非常に稀な構造(β-1,3-グルカン)をしており、あえてこれを栄養にしようとする生物も、 分解(切断)できる消化酵素もほとんど存在しません。そのため、経口投与(口から摂取)しても体内で消化・吸収されることなく、 そのまま消化管を安全に通過していくという特異な性質を持っています。
私たちはこの「吸収されずに腸を通過する」特性を最大限に活かし、水溶性と機能性を付加する化学修飾 (カチオン化・アミノ化など)を施すことで、消化管への副作用が少なく、強力な薬効を発揮する以下の新規物質を生み出しました。
当社が開発した主要なパラミロン誘導体
カチオン化パラミロン誘導体 / アミノパラミロン
開発体制: 株式会社Artisan Lab・産業技術総合研究所(産総研)・株式会社神鋼環境ソリューション(共同研究)
パラミロンを基盤とした新たな胆汁酸バインダー(Bile Salt Sequestrants)です。 高脂肪食を与えた肥満モデルマウスにおいて、「やせるホルモン」と呼ばれるインスリン分泌促進ホルモン「GLP-1」の分泌量を約3倍にまで劇的に増加させ、内臓脂肪の蓄積を強力に抑える効果が実証されました(2018年5月 産総研プレスリリース発表)。また、同年には国際的な薬学学術誌 『Pharmaceutical Research』にて、その合成法や抗糖尿病薬としての高いポテンシャルを証明する論文が掲載され、 学術的にも高く評価されています。
6-アミノ-6-デオキシパラミロン(6-amino-6-deoxy paramylon)
開発体制: 株式会社Artisan Lab・株式会社神鋼環境ソリューション(共同研究)
パラミロンを構成する糖の6位の炭素をアミノ化した、特殊な直鎖状高分子です。 世界最大級の学会である第54回ヨーロッパ糖尿病学会(EASD 2018、ドイツ・ベルリン)において、 鈴木先生らとの共同研究として「食餌誘発性肥満モデルマウスにおける肥満および糖代謝の改善効果」が発表され、 国際的に大きな注目を集めました。
劇的な効果を生む「作用メカニズム」
これらのカチオン性(プラスの電荷を帯びた)パラミロン誘導体は、腸管に到達すると主に以下のようなメカニズムで 代謝を根本から改善します。
胆汁酸の強力な吸着・排出
腸内でマイナスの電荷を持つ胆汁酸と強力に結合し、物質ごと便として体外へ排出させます。 物質自体が消化酵素で分解・吸収されないため、効率的に体外へ運び出せます。
GLP-1 の分泌促進と代謝改善
胆汁酸の排出過程で腸管の受容体が刺激され、GLP-1(やせるホルモン)が分泌。 これにより血糖値の上昇が抑えられます。さらに肝臓が新たな胆汁酸を作るために 血中のコレステロールを消費するため、脂質異常症の改善にも繋がります。
従来の不溶性樹脂を使った胆汁酸吸着薬のような重い胃腸障害(便秘や膨満感など)を起こさず、 極めて少ない負担で安全に効果を発揮するのが、これら次世代パラミロン誘導体の最大の強みです。
学術評価と特許実績
Shibata K, et al. “Creation of Straight-Chain Cationic Polysaccharide-Based Bile Salt Sequestrants Made from Euglenoid β-1,3-Glucan as Potential Antidiabetic Agents”
Pharmaceutical Research, 2018 — DOI: 10.1007/s11095-018-2553-8
第54回欧州糖尿病学会(EASD 2018、ドイツ・ベルリン)にて本研究成果を発表。 国際的な糖尿病研究コミュニティから高い関心を受けました。